開発の動機とかその辺(その2)
2026-03-13T00:00:00.000Z
理想の創作用エディタを求めて
OmmWriterというエディタがある。
雰囲気の良い背景画像とフレームレスウィンドウ、上質のアンビエントミュージックと7種類ものタイプ音を備えた没入感の高いフルスクリーンエディタで、タイトルバーは巧妙に隠されており、執筆を開始すれば残ったUIも全て消え失せる(いわゆるZENモード)。
そして余計なノイズの一切が排除された空間で控えめなタイプ音だけが静かに響き、執筆に集中できるという傑作エディタである。
ただ残念なことに、海外産ソフトウェアの常で、このエディタは縦書きやルビといった日本語の組版に一切対応していない。
これはOmmWriterに限った話ではなく、海外産のテキストエディタやマークダウンエディタはどうしてもここがネックになる。
では国産エディタはどうかというと、こちらはどういうわけか、ZENモードに対応したエディタがあまりない。
BGMを流せるエディタも少なかった。実装自体はそう難しくはないのに存在しないということは――まあ、テキストエディタにそんなものを求めている人は余りいなかった、ということなのだろう(昨今では結構出てきた印象があるが)。しかし、私はどうしてもそういうエディタが欲しかったのだ。
OmmWriterみたいな没入感で縦書きができたら良いんだけどなあ……などと考えながらエディタを探し続けていたのだが、あるとき面白いエディタに出会った。
Left
それがLeftというオープンソースのエディタである。
https://github.com/hundredrabbits/Left
Electron製の創作用エディタで、もともとはWiktopherという小説の執筆のために作られたそうだ。
特徴的なのはそのインターフェースである。タブとアウトラインがシームレスに一体化した構造にも興味を引かれたが、何よりもまず、そのシンプルでミニマルなデザインに魅了された。
とはいえ、これもまた海外産エディタの宿命で縦書きにもルビにも対応していないが――しかしこれはオープンソースのエディタである。
自力で改造すれば、ひょっとしていけるんじゃね? そう思った私は、見よう見まねでエディタの改造にとりかかった。
前稿でも述べたが、私はプログラマーでもエンジニアでもない。そもそも理系ですらない(なぜか友人には理系が多いが)。プログラミングの学習経験はほぼ皆無で、ごく初歩的な知識すらなかった(今でもろくに分かっていないが)。
この頃はまだGeminiが登場する前(GoogleのAIはBardだった)のことである。ChatGPTはたしか存在していたと思うのだが、私は使い方がいまいちわかっていなかった。……で、仕方がないのでコードを見ながらなんとなく構造を把握し、ネットで調べてあれこれいじっていくうちに、縦書きとルビ、BGMとタイプ音、背景画像あたりまではなんとか実装することができた。
これはこれで自分用のエディタとしてはそれなりに満足していたのだが、まあ所詮は素人の手になる改造である。細部を見れば、作りの荒さは随所に見て取れた。
とはいうものの、私の実力ではそれをどうにかすることはできなかったのだ――その翌年、AIが更に進化し、私程度のスキルでもバイブコーディングが可能になるまでは。
そしてCodeMirror 6をベースに1から開発し、誕生したのがMirrorShardというわけだが、それについての詳細は前稿に譲る。
近年のAIの急速な発展については賛否含めてあれこれ言われているが、少なくとも私にとっては僥倖だったと言えるだろう。――私のような、「欲しいものの姿は見えているが、それを実現するための力が足りなかった」人間にとっては。